アマカン講談師の講談的ひとりごと

講談と講談師について、アマチュア講談師が気ままに語ります。

第二十三席 学校の体育館で講談を読む‼️

   読み聞かせの時間に講談を読ませていただいている小学校で、
一度、体育館で全校生徒を前に講談を読んだことがあります。

全校生徒の前です。

小学校の全校生徒というのは、
1年生から6年生までがいるわけです。

私ぐらいの歳になると、
5歳違いでも、そんなに大差はありませんが、
小学校1年生と6年生の5歳の差というのは、
本当に大きいです。

この1年生から6年生までの生徒さんが
一緒にいるところで、
しかも体育館というとても広いところで講談を読む〜。

これは、かなり難易度が高いです。ウルトラCです。
ネタ選びも講談の進め方もかなり難しいです。

普段、学校の読み聞かせの代わりに講談を読むときは、
教室で、30人から40人の生徒さんに向かって読むわけです。

同じ学年ですから、その学年の生徒さんが
わかるネタを聞いてもらうようにすれないいわけです。

300人近い全校生徒の前で一斉にー。
しかも天井の高い体育館でー。

本当に頭を抱えるんですが、
やりますと言ったからには、
やらねばならないわけです。

で、選んだネタは、
「レ・ミゼラブル」
池波正太郎さんのお書きになった「伊勢屋の黒助」を
講談仕立てにしたもの。

これなら、なんとか、低学年でもついて来てくれるだろうと、
そう考えたわけです。

「レ・ミゼラブル」は、
ジャンバルジャンが、皿を盗んで教会から逃げたところで捕まったものの、
神父の言葉で改心をするという、
あの有名なシーンを講談に仕立てたもの。

「伊勢屋の黒助」は、
魚屋と猫が主人公の人情噺。

いずれも、登場人物が少ないので、
誰が誰なのかわからなくなるという心配はありません。

そして、話も想像しやすいので、ついてこれると考えました。

もう1つ、広い会場でクリアしなければいけないのは、
その広さと天井の高さに負けないと決めることです。

声は、マイクがあるから届くんです。

しかし、自分の気持ちが届くかどうか、
あまりに広いと不安になるんです。

ですから、私の場合、
「この300人の中の1人には、
自分の気持ちは届く、
その1人に向かって講談を読む」と決めます。

教室で講談の読み聞かせをする場合にも、
「聞いてくれる1人に向かって読む」
ことを意識しますが、

会場が広くなると、
さらにこの気持ちを強く持とうと思います。

学校の体育館で講談を読んだ、その結果は、
思った以上に、
みんなが話に入って来てくれたということです。

私は、
「講談は聞いても聞かなくてもいい、
ただ、お隣の人とお喋りはしないでね」とお願いすることが多いのですが、

今まで、喋って困った、騒いで困ったというのは一度だけ。

結局は、実によく聞いてくれるわけです。

体育館のような空間でも、
小学生が講談という伝統話芸をちゃんと聞く〜

これは、すごい光景です。

そのすごい光景を目の当たりにすると、
講談という話芸のチカラ、
小学生には講談を聴かせてないだけ、聴かせれば驚くほど聴き入ってくれる、
もっと、聴いてもらう機会を作ろう
としみじみ思うのです。